福井県立美術館で「戸田正寿展」開幕 「泣かせる」ペンギンなど足跡一堂に

福井県立美術館(福井市文京3)で7月15日、企画展「“創造する広告⇔アート⇔新しい光” 戸田正寿の世界」が始まった。

坂井市出身のアートディレクター・戸田正寿さんの足跡をたどる展覧会で、同館と福井テレビでつくる実行委員会が主催。同館1階の第1・第2展示室とギャラリーを会場に、ポスター、新聞広告、テレビCMなどの広告作品や、近年取り組んでいるという現代美術作品などを展開する。戸田さんの大規模な個展が福井で行われるのは初めて。

同館によると、戸田さんは1948(昭和23)年、現在の坂井市三国町生まれ。三国高在籍時代、同高の美術教員だったジャンクアートの巨匠・小野忠弘さん(故人)から大きな影響を受け、広告の道へ飛び込んだ。高島屋宣伝部、日本デザインセンターを経て、1976(昭和51)年には自身の事務所を設立し、多くの作品が海外の美術館に所蔵されるなど国際的な評価も高いという。

1980年代初め、ひこねのりおさんと共に制作した「パピプペンギンズ」は、サントリー「CANビール」のCMキャラクターとしてヒットした戸田さんの代名詞的作品。松田聖子さんが歌う楽曲「SWEET MEMORIES(スイート・メモリーズ)」と、所ジョージさんの「泣かせる味じゃん」というナレーションに合わせて、ペンギンが涙をこぼすアニメーションも話題になった。

会場出口付近には、「パピプペンギンズ」らと記念撮影できるコーナーも

1970年代からの自身の作品群を見つめながら、「私の表現の基底にはずっと現代美術があった」と戸田さん。カメラマンの撮った写真を切り裂くような表現を取り入れたウイスキーの広告を引き合いに、「『カメラマンの尊厳を損なうのでは』と訴訟を心配する周囲の声もあったが、新しい物事には斬新な表現で応えたいという一心でここまで来た」と振り返る。

展示室では、意匠監修した光るキャンバス「Lightface(ライトフェイス)」や、三国の雄島の景観を刻々と変化する絵画に見立てる美術館「Brilliant Heart Museum(ブリリアント・ハート・ミュージアム)」のダイジェスト映像なども紹介する。展示作品の総数は400点以上にのぼるが、担当学芸員の西村直樹さんは「展示室全体を『戸田正寿の世界を表現する一つのインスタレーション(空間芸術)』として鑑賞してもらえれば」と話す。

自身の進路を決定づけた10代の経験を基に、「北陸三県高校生現代アートビエンナーレ」審査員を務めるなど後進の発掘にも注力する戸田さん。「若い人たちと交流すると、現代美術があらゆる表現活動の起点になることを実感する」と話し、美術表現などを通して共に闘う若者への「戸田正寿のプレゼンテーションの場」としても同展を位置付ける。

会場入り口付近では、戸田さんが手がけた企業ロゴや雑誌題字などを展示する

関連イベントとして、見どころ解説会(毎週土曜)、笙(しょう)演奏家・宮田まゆみさんによる「雄島の四季と戸田正寿に捧(ささ)ぐ」(7月16日)、対談「戸田正寿の軌跡」(同24日)、対談「戸田正寿のクリエイティブ」(8月7日)、学芸員トークサロン「戸田正寿のアートディレクション」(同21日)などを行う。館内ミュージアムショップでは、県内在住のデザイナーらが手がけたグッズを特集して販売する。

開館時間は、9時~17時(入館は30分前まで)。入場料は、一般=1,200円、高校生=800円、小・中生=500円。8月31日まで。

(記事は福井経済新聞提供)

福井県立美術館
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