【レビュー】コシノヒロコ展 COLORS-アートとファッションの世界-

服飾デザイナーという肩書を外し、ひとりの女性作家として発表しても良いのではないか、と思われるくらい、力のある作品展だった。

どこかの街の断片を切り取ったような絵が、このあとの服飾デザインに反映されていく。

一階は、彼女が筆を持ちサッと絵付けを施した磁器や漆器の展示。眼鏡もあった。箱に色を塗って壁面に設置した作品群は、異国の地方都市を俯瞰的に再現したような印象を受けた。こぢんまりとした展示だったが風景が目に浮かぶインスタレーション。漆器や繊維、和紙と言えばということで福井の伝統工芸とのコラボもあり、その縁で今回の展覧会が実現したのだろう。見ていて思ったのは、どんな伝統工芸と組んでも「コシノヒロコが作った」存在感。誰が作ったか分からない作家性を出さないのが伝統工芸品だ。そこに「私が作ったのよ」という強い主張を乗せてくるアピール、一流の押しの強さが世界での成功に必要なのか。

漆器とメガネと繊維とカオス展示をうまくまとめていた。奥に飾ってあるのは洋服のデザインスケッチ。

続いて3階へ。ここはコシノヒロコの私的な絵画空間だった。服飾デザイナーだからテキスタイルや抽象的なデザインを得意とするのかと思いきや、人を描くのが好きなようである。アクリルを使い、風景や人を描く。そしてうまい。うまいというのは人となりをつかむのがうまい、という意味で。

彼女は実際は「洋服のことばかり考えている」だろうけれども、展示をみたとき、彼女の創造力の根底には「絵を描く」ことがあるように思えた。人を描く、風景を描く、それが好き。好きで描いていたい気持ちがあふれていた。

心惹かれたのは人の顔シリーズ。
冒頭の箱に描いた絵がテキスタイルに。ビスコテックスの技術で再現したそう。

展覧会の鑑賞順序は、1階から3階へ、そして1階へ戻りコシノヒロコファッションを一覧できる部屋へ進むのがおすすめ。2018年服飾モデルも公開。同時にマネキンも美しくて見惚れてしまう。
公開されている服飾だけ見れば、正直言って色使い、生地使い、雰囲気はおそらく今のトレンドではない。よく言えば定番、コンサバティブといったところか。コシノヒロコスタンダードが確立されている。「私が好きでいいと思うもの」の感性にぶれのなさを服飾から感じ取れた。コシノヒロコ展は魅せ方がうまい。展示ディレクションも良かった。

私、着こなせます!とヒロコさんに言いたい服がここに。
私のクローゼットに入ってそうな…?

 

背後からも見られるというのがよい。興奮ポイント。普段のテレビショーではなかなか一同に見られないから。

コシノヒロコ展 COLORS-アートとファッションの世界-
平成30年8月5日~9月9日
鯖江市まなべの館
〒916-0024 鯖江市長泉寺町1丁目9番20号
電話 0778-53-2257

鯖江市まなべの館

この記事を書いた人

SAITO Riko

SAITO Riko(齊藤理子)

幼い頃から絵が好き、漫画好き、デザイン好き。描く以外の選択肢で美術に携わる道を模索し、企画立案・運営・批評の世界があることを知る。現代美術に興味を持ち、同時代を生きる作家との交流を図る。といっても現代に限らず古典、遺跡、建築など広く浅くかじってしまう美術ヲタク。気になる展覧会や作家が入れば国内外問わずに出かけてしまう。