2022年10月9日、『福井の建築を語ろうトークツアー』の2回目を福井県福井市のメトロ会館で開催しました。
会館があるのは福井市の繁華街「片町」。館内にある映画館『メトロ劇場』とともにメトロ会館を巡る建築ツアーです。
ロビーには、50年前、このビルを設計した故仙坊光男さん(センボー建築事務所創業者)の手書き図面をパネルにして並べ、ツアーでは参加した人にだけ公開するエリアへとご案内しました。
まずは、メトロ劇場のロビーで、芸術専門楽群スタッフ・森川がビルの歴史やメトロ劇場の成り立ち、増改築の変遷などを説明。映写室(普段は立ち入り禁止)、その昔ビアガーデンも開いていたという屋上(これも普段は見られない)を経て、劇場内、スクリーンのある壇上へと移動します。
壇上では参加者の方に俳優ばりの「舞台あいさつ」気分を味わっていただきました。普段は客席から見ているみなさんですので、「(俳優さんって)この高さから客席を見てるんだ!」とテンションも上がり気味に。興奮冷めやらぬまま、一行は舞台裏の秘密の部屋へ移動しますが、秘密の部屋で見たもの、それは秘密です(撮影禁止、拡散禁止?)。
メトロ劇場の見学を終え、一行は3階へ。エレベーター横にある、これまた謎の石の壁をまじまじと見つめます。芸術専門楽群のスタッフもメトロ劇場に来るたび石の壁が気になっていたのですが、調べても分からず設計図にも記載なし。ご存じの方がいらっしゃいましたらぜひ、情報をご提供ください。
そうそう、3階は昭和40年代、『サウナメトロ』と称した今でいうスーパー銭湯みたいな場所(といえばいいのかな)だったんです。 参加者のみなさんには、サウナの名残りであるボイラー室もご覧いただきました。
さて、今度は2階へ。
実はここが味わい深いロードなのです。『テレパシー』さんが現在入居している場所は、その昔『サントリーパブ・ウィーン』だった所。ウィーンで開催されていたカクテル教室に通った方もいらっしゃるのではないでしょうか。2階には『スイス』もありました。ウィーンとスイスがこの建物に存在していたわけです。
メトロ劇場のある4階からダイレクトにつながるビル東側の階段(通常、2階から上は閉鎖)を降りると、そこには昭和50年ごろから変わらぬ風情の手書きの看板が。階段を振り返って見上げると曲線美が印象的なタイル貼りのひさしがあり、私たちが勝手に妄想&仮説をたてた「ル・コルビジュエの建築」とメトロ会館の類似点を話しました。
そして正面に回って外壁を覆うルーバーをまじまじとご覧いただき、ビル西側の階段を上がって、冒頭に見学した屋上(普段は施錠中)へ到着。ここがゴールです。
参加者の方はツアー終了後も劇場に残り、メトロ会館の変遷をまとめたスライドショーや収集した資料(いずれも芸術専門楽群のスタッフが編集)を見ながら建築談義・映画談義に花を咲かせました。みなさんのトークは尽きることがなく、熱い思い入れを伺うことができました。
参加者のみ公開した場所もあるため写真が載せられない場所もありましたが、どのフロアも50年以上の歴史を感じさせる濃厚なたたずまいでした。これからも、メトロ会館が多くの人たちに愛される建築物として片町に在ることを望みます。
【番外編】
もう一つの建築の愛し方。スタッフに「建築か映画に関する服装で挑むように」というドレスコードを出しました。建築Tシャツ大会の結果発表です。
このイベントのためにメトロ会館の成り立ちを調べリーフレットにしました。
メトロ会館の館主、奥様に取材したり、センボー建築事務所の方のご協力を得て一大大河ロマン史が完成しました。
- 企画・制作・編集
芸術専門楽群 齊藤理子×森川徹志(株式会社カウベル・コーポレーション) - デザイン
SEWI(中村文信・佐藤美羽・野坂亜鼓) - 協力
名津井卓也、青木一実(atelier-fos一級建築士事務所)、酒井潤、たとり直樹(スタジオ壱景) - 特別協力
メトロ劇場、株式会社センボー建築事務所
(順不同)
このイベントは、福井県『令和4年度アートプロジェクト支援事業』の助成を受けて実施しました。