私の聖地のひとつロンドンのテート・モダンに行ってきました。聖地をお参りしてきました。
テート・モダンはテムズ川沿いにある現代美術を主とした美術館です。元火力発電所「バンクサイド発電所」だった建物をリノベーションしました。この発電所から美術館になるいきさつが興味深いです。
「バンクサイド発電所」は1947年、戦災復興に向けてロンドン市内に電気を供給するために急きょ建てられた発電所でした。その後1981年閉鎖されましたが、歴史的建築物として保存できず「いつ取り壊すか」という状況でした。
そのころ、文化面において「テート・ギャラリー(現:テート・ブリテン)」は展示収蔵スペースが不足しており「どこか近くに大きな建物ないかな」と探していたところ発電所の名前が挙がったそうです。1995年に大々的なコンペが行われ、スイスの建築家コンビであるヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)の案が採用されました。元の建物の大部分を保持した案だったことが決め手でした。
2000年ミレニアムイヤーに合わせてオープンしたテート・モダン。当時の雑誌でこの美術館を目にした私は、近現代美術をコンセプトにしていること、リノベーションした建物に作品が並んでいること、展示構成が斬新だったことに大きな衝撃を受けました。「これを見なければ美術は語れまい」と私は2002年に訪れたのです。
それから15年、再び「行かねば」の気持ちを突き動かしたのは新館のオープンでした。2016年、再びヘルツォーク&ド・ムーロンの設計によって「スイッチ・ハウス(Switch House)」が建てられたからです。最初はガラス張りの「今の流行だぜ」的な設計だったようですが、えらい反論にあい、元のテート・モダンに合わせたレンガ造りになったそうです。このあたりのいきさつもすごく知りたい…!
さて入館してまず心躍りテンションマックスになっちゃうのが、吹き抜けの大空間! 発電機のあった巨大なタービン・ホールを大エントランスホールにしています。
入館は無料ですが、企画展示は有料です。訪れた日にやっていた企画展はポップ・アートと言えば「ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg)展」、実は計算済み?写真家「ウォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)展」、美術コレクターとしても知られるエルトン・ジョンがセレクトした写真展「ラディカル・アイ(THE RADICAL EYE)展」です。私は2企画+常設展で1ドリンク付きチケットを23ユーロで購入。ティルマンスと、ラディカル・アイを見て回りました。
テート・モダン内は基本的に撮影し放題。ですが撮影している人は少なかったです。
テート・モダンの本館常設展示の特徴は時代順ではなく、例えば「風景」「静物」「人体」「歴史」などテーマごとに異なる時代の作家と作品がまとめられていること。相互の影響の有無や関係性が分かりやすく、時代を超えて作品を見渡すことができます。一時代に、一作家にこだわることなく、俯瞰して観ることができるのです。最近は「美術運動」ごとに作品を展示する試みもあるようです。
新館では作家ごとの作品展示がされていました。ルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois)! レベッカ・ホルン(Rebecca Horn)! 彼女たちの作品と対峙すると、私の子宮の奥のヒダがぞわぞわっとくるのです。このぞわぞわ感を誰かと共有したい…!
中谷芙二子さんの霧の作品「London Fog」。一定時間になると人が見えなくなるくらい白い霧(というか水蒸気)が発生して包まれます。正直、そこにいると水で服がベットベトになります。ロンドンの霧を人工的に作っている作品でしょうか。
帰国後私が知ったのは中谷芙二子さんは1970年大阪万博ペプシ館で人工霧による「霧の彫刻」を発表していたということ。さらに中谷芙二子さんのお父さんが、雪の科学者・中谷宇吉郎さんだということ。そう、建築家・磯崎新さんが設計した「中谷宇吉郎 雪の科学館」(石川県加賀市)の方です。この科学館でも霧の発生を体験できますよ(大人にも子どもにもおすすめの科学館です)
どこか本当の入り口なのか分からなかったけれど、外構に竹が植えられているのが印象的でした。というのも、テート・モダンのレンガの建物の前になぜ竹藪が…。突然の日本趣味に戸惑う日本人です。
昼に入って出てきたのが19時くらい。半日いても納得いくまで見られる時間が取れなかったので、また行きます。テート・モダンは22時まで開館していて、本当にうらやましい開館時間です。
テート・モダンは、国立美術館ネットワーク「テート」(”Tate”)の一施設です。2000年にテートの名を頭文字にした4つの国立美術館に改組されました。
2017年3月訪問