永田美保子&増子幹展 -ステンドグラス- 線と色、ステンドグラスの新しいかたち

永田美保子さんと増子幹(ますこつよし)さん、ふたりのステンドグラス作家による展覧会がアートスペース北の荘で開催中だ。

増子さんの作品群。ランプも一癖あるデザインに。奥で作品をチェックしている男性が増子さん。

ステンドグラスというと、欧州の教会やガラスのランプシェードを想起する人も多いだろう。展示されている作品はそういった一般的なイメージとは違い、ステンドグラスの技法を使った作家作品である。

増子さんの作品は、壁面に掛けられているものの、一枚の平面ガラスを立ち上げたような半立体の様相を見せている。ひとつのパーツを一定の法則で組み合わせたものもあれば、天地左右あちこちの方向に向かせたものもあり、真鍮に差し込まれた色ガラスが光を通して白い壁を飾っている。

増子さん「ステンドグラスは職人の技術なんです。丁寧に仕上げをした作品は、見ても気持ちがいい。雑なところはみえてしまいますからね」

増子さんはパーツを組みわせた本展作品(未発表)について「創作の起点はランプシェードで、その技法がベースにありました。2年前からもっと彫刻的な形に、もっと現代的なイメージにできないかと考えていたんです」と話す。

「小さいピースが集まって、組み合わせて、繰り返して、向きをバラバラにしてみる。粒子が集まってできる立体のイメージを近作では落とし込みました」。それゆえ作品タイトルはすべてParticle(英:粒子)と名付けている。抽象画と法則性をもった構成デザインの間のような、心地よいリズムのある作品だ。

必ず下書きを描いて、色をつけイメージを作る。線が黒か銀色かもポイント。本展では枠の色にも注目を。

増子さんに、作品とどう向き合っているか、創作の核を伺うと「自己作品をできるだけ俯瞰して見渡すことに努めています。一番重要視しているのは、自分が感動するもの、であること。自分の意図した以上のものにしたいし、以下にしたくない。それがクオリティと考えています」。

永田さんの作品(一部)。手ごろなサイズなので窓際や玄関先に立てかけておけばインテリアになる。ドアの一部にいれると室内の空気を変える一枚に。

永田さんは、より絵画的なアプローチでステンドグラスを表現手段にしている。例えば、ギャラリー入り口正面の窓ガラス側に吊り下げられた左側の作品は、筆の塗り跡を見ることができる。これは、ガラスの上に顔料を塗り、その上からペインティングして焼き付けるというやり方で完成されたもの。「ガラス板に絵を描いている」そんな気持ちでのぞんでいるという。

取材中、永田さんから何度か発せられるのは「線を描く」という言葉。その言葉通り永田さんの作品の一番の特徴は「線」にある。作品に現れる線は、機械的な直線ではなく、良い意味でゆがみとぶれを持ち、それでいて滑らかな動きを持つ。「この線は、筆(書)で書いているんです。まず用紙になんども筆と墨で書いて、一番良いと思ったものを線としてステンドグラスにあてはめています。意識的やるとうまく描けるのだけど、“気”が入ってないとだめ。線には素直に表れるのよね」。

永田さんが手にしているのは「Le matin」。フランス語で「朝」という意味。壁に映るオレンジ色と作品のオレンジ色の違いにも気づいてほしい。

永田さんは一貫して「自然」をテーマに作品を制作してきた。今回も波、夕焼け、朝焼け、森の風景などが並ぶ。同じデザイン画が2枚ずつある作品では、ほんの小さな色違いのガラスを使っているだけで印象が随分と異なることに気づく。「ピアノでも、強くたたく、弱くたたくと音が違うように、ガラスも色の強弱で作品が変わるのです」と永田さん。作品に光を通すと色の強弱がはっきり分かる。

ふたりは同じアトリエで制作をしているが、作風はそれぞれ。制作の相談をすることもあるそうで、「そうね、人の作品って冷静に見られるのよ(笑)」(永田さん)、「製作は孤独な作業。前しか見えなくなるときにアドバイスを求めるときがある」(増子さん)。

壁面に飾られていると、作品そのものに注目しがちだが、ステンドグラスの本領は、光を通して奥に映しだされた色にある。造形としての美しさと、光を通した先の美しさの2つを感じてほしい。

永田美保子&増子幹展―ステンドグラスー
会期 2019年6月12日(水)~17日(月)
11:00~18:00(初日は14:00から)
アートスペース北の荘
〒910-0006
福井県福井市中央1−20-25三井ビル3F
JR福井駅西口から徒歩5分/駐車場なし

36.060975,136.218231

この記事を書いた人

SAITO Riko

SAITO Riko(齊藤理子)

幼い頃から絵が好き、漫画好き、デザイン好き。描く以外の選択肢で美術に携わる道を模索し、企画立案・運営・批評の世界があることを知る。現代美術に興味を持ち、同時代を生きる作家との交流を図る。といっても現代に限らず古典、遺跡、建築など広く浅くかじってしまう美術ヲタク。気になる展覧会や作家が入れば国内外問わずに出かけてしまう。