越前市の「卯立(うだつ)の工芸館」(越前市新在家町)で現在、企画展「荒井恵子の世界 墨と和紙 そのあわい」が行われている。
紙の神「川上御前」を祭る岡太(おかもと)神社・大瀧神社(越前市大滝町)の1300年大祭に合わせて開く同展。千葉県在住で、墨を使った表現を手掛ける現代美術作家の荒井恵子さんの作品を展示する。福井での個展は約4年ぶり。
越前和紙の起源から未来へ続く紙すき職人たちの心の動きを描いたという、8枚1組・計32枚のふすま絵「起承転結」は1階座敷で展開。大祭を記念して同神社に奉納した作品で、岩野平三郎製紙所(越前市大滝町)の手すき和紙「白麻紙」「神郷紙」と、墨運堂(奈良市)の「百選墨」を用いた。
荒井さんは「大きな和紙を手すきで製造している産地は全国的にも珍しく、青や茶などの色を帯びた墨100種の表情を生かした作品ができた。やり直しがきかない一発勝負の制作だが、にじみなどが見せる思いがけない展開も墨の表現の魅力」と笑顔を見せる。
自らふすまを開け閉めしながら「余白の変化でリズムが変わって見えるのもふすま絵の面白さで、情緒性を備えたインタラクティブアートという趣がある。日本人の暮らしからふすま絵が無くなりつつあるのがもったいない」とも。
3年がかりで制作した奉納ふすま絵の「起承転結」は同展期間中のみ一般公開する。学芸員の中川智絵さんは「『あわい』という言葉には、物と物との関係性という意味がある。1階を展示会場にした企画展は極めて珍しく、墨と和紙のあわいが生み出す空間を体感してもらえれば」と話す。
2階では新作「起承転結-集転」のほか、これまでに荒井さんが発表した作品約20点も展示する。関連イベントとして5月4日14時から、荒井さんと同製紙所の岩野麻貴子社長との対談を行う。
開館時間は9時30分~17時。料金は300円(高校生以下無料)。火曜休館。5月31日まで。
(記事は福井経済新聞提供)