扉を開けば、そこはベネチアのカーニバルの景色 ―― イルニッビオ・西野さん

三国町に、イタリアがあります。間違いなくイタリアの雰囲気が、安島地区にあります。
イタリアンカフェ『IL NIBBIO(イルニッビオ)』は、南イタリアの納屋をイメージした漆喰壁の建物と空間。店内のギャラリーコーナーでは、イタリアの陶器や小物のともに突然、仮面が異彩を放っていました。不思議そうに見つめる私のそばで、女性が出てきて声をかけてくれました。
「その仮面、私が作ったんです。仮面をつけて歩きました」
ベネチアのカーニバルに、自作の仮面と衣装をつけて歩いたと驚きの発言。本カフェのオーナーである西野さんに、そのいきさつをお聞きしました。

「日本人」を脱ぎ捨て、ベネチアの迷宮へ
西野さんが初めてイタリアの地を踏んだのは2009年のこと。中世の古さを色濃く残す街並みや、ルーズさと集中力を合わせ持つイタリア人の気質に魅了されました。
2011年、ベネチアの旅でカーニバルを知ります。「いつかあのカーニバルに自分も参加してみたい!」と前のめりに。しかし現地での衣装レンタルは非常に高額だと聞き、「それなら、自分で作ってしまおう!」と思いたちました。

左側の椅子に立てかけている写真がベネチアカーニバル時の西野さん

ここからハンドメイドとクリエイティブのスゴイ技を西野さんは発揮します。
「既製服に様々なパーツを縫い付け、それらしく見えるよう工夫しました。こだわったのは、きらびやかにせず、あえて暗い方向(シック)へ落とし込むこと。ベネチアの壁にあった古い絵をイメージしました。現実感を消すために、肌が一切見えないようにして、首も目の周りも真っ黒に塗ったんです。仮面は既製品、ほら、あの映画の、スケキヨって分かります?あれが土台なんですよ(笑)」
念願が叶ったのは2016年2月。衣装をまとい仮面をつけて一歩街へ出れば「自分が日本人であることすら誰も気づかない」ことに興奮とうれしさがこみあげてきたそうです。「写真を撮って」と現地の人にも声をかけられ、、一日中迷路のような街を歩きまわりました。
「仮面をつけると、本当に気が大きくなるというか、素晴らしい解放感があるんです。国籍も年齢も問われない迷宮の中で、恥ずかしさなんてきれいさっぱり消え去っていました」。

威圧感から、店舗の「非日常」へ
西野さんは旅の記念として、仮面を洋服にくるんで大切に持ち帰りました。
「仮面ってね、日常生活の中に置くと、あまりにも強い存在感で、圧倒されてしまうんです。特に人物の仮面は常に視線を感じるような独特の威圧感があって、自宅は飾れなくて」。
しかし、その仮面たちが自身の店「イルニッビオ」のギャラリーに並んだ瞬間、しっくりと馴染みました。店舗のナチュラルな南欧風の雰囲気とは異なるのでは、という気持ちを一蹴、逆に仮面があることで突然のドラマチックな非日常空間になったのです。
店のオープン以来、仮面のことを聞くのほぼ女性だとか。「お面が語りかけてくるのでしょうかね」と西野さんは笑います。

取材を終えて

イタリアへ直接商品を買い付けに行く西野さんだからこそ語れる、現地の職人(おめんアーティスト)や実際に体験した物語。来訪客に仮面の説明をする西野さんの言葉は、自然と熱が帯びています。妖しくも美しいその展示は、訪れる人々を、いつでも時空を超えた想像の旅へ誘ってくれます。

或る場所

IL NIBBIO(イルニッビオ)
福井県坂井市三国町安島2丁目202.203
TEL:0776-81-7610 
営業時間:昼11:00〜18:00
定休日:月・木・第3日曜日
Instagram
https://www.instagram.com/il.nibbio/

カフェオープンのきっかけ
オーナーの西野さんが「ぼんやりとお店をしたい、小物を販売する場所を作りたい」と考え始めたのは数年前のこと。お気に入りのイタリアンレストランが閉店する際にアンティークテーブルの什器を譲り受けたことが一つの転機でした。

「三国町内で場所を探したとき、古い蔵も見せてもらいました。でも、私のやりたいイタリアの雰囲気にはそぐわないと思ってね」。最終的に、車庫を取り壊したスペースに店舗を建築することに決めました。

内装の手がかりとなったのは、工務店「デリケートトゥール」との家づくり、そして西野さんが旅して心に焼き付いた「南イタリアの牛小屋、馬小屋、あるいは納屋」のイメージ。漆喰の壁、温かみのあるタイル、ドアノブにいたるまで、すべてを自分の目で見て決定。お気に入りのキャビネットや照明をネットで先買いし、「入れる器(建物)ができる前から、中身が先に決まっていた」というほどの情熱が注がれています。
「こんな場所で?なんて思われますが年齢問わずいらっしゃいます。電車やバスを乗り継いで来られる方も。県外の方もくるので田舎に居ながら新しい出会いがあります」と楽しむ心で来客をもてなす西野さんでした。

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この記事を書いた人

SAITO Riko(齊藤理子)

幼い頃から絵が好き、漫画好き、デザイン好き。描く以外の選択肢で美術に携わる道を模索し、企画立案・運営・批評の世界があることを知る。現代美術に興味を持ち、同時代を生きる作家との交流を図る。といっても現代に限らず古典、遺跡、建築など広く浅くかじってしまう美術ヲタク。気になる展覧会や作家がいれば国内外問わずに出かけてしまう。

アート関連の発信はFacebook個人、Instagram個人にてバシバシ行っております@cowbellriko


I have liked drawing since I was young, manga and design. I tried to find a way to be involved in art other than painting, and found that there were ways to be involved in planning, management and criticism. I am interested in modern art and try to interact with contemporary artists. I am an art otaku, however, it is not limited to modern art. I appreciate widely and shallowly in classical literature, remains, and architecture. If there is an exhibition or an artist that interests me, I go anywhere in and outside of Japan.