「アートって一気に高めるんですよ。暮らしの質を」 エクリュギャラリー オーナー・横山哲明さん

JR福井駅から車で10分弱。足羽(あすわ)山トンネル近くの交差点に、隅切りのつくりが印象的な1軒の建物があります。それが今回訪れた『エクリュギャラリー』。2005年創業の工務店『Ecru(エクリュ)』2階にある隠れ家的なギャラリーです。

瀟洒な外観から「『カフェ?』と間違えられることも」と言うのは、同社代表でギャラリーオーナーの横山哲明さん。交差点で信号待ちするたび気になっていた建物で、ギャラリー開設の経緯やねらい、住まいとアートとの関連性などについて話を伺いました。

「オーナーとの接点づくり」がギャラリー開設の起点

ーカフェと間違える方が多い理由がうなずける建物ですね。まずはこの場所にギャラリーを設けた経緯からお聞かせいただけますか。

2014年から1年かけて、弊社設立10周年のホームパーティをしたのがきっかけです。10年の間に建てさせていただいたお施主さん―弊社ではオーナーさんと呼んでいるのですが―を一組ずつ我が家にお招きして食事会をしたんです。

その時、あるオーナーさんが「いまだに絵が選べてないので、何か提案してもらえませんか」ということをおっしゃったんです。オーナーさんのおうちを設計する際に、壁に絵を掛けるというようなプランも打ち合わせして建てたんですけど、ずっと絵が飾られないままだったと。それでギャラリーをしようという思いに至ったんです。

-この場所(福井市左内町)が創業地なのですか?

いえ、創業地は福井市大町です。(ショッピングセンターの)ベルの近くですね。ここに移転してきたのは2016年です。

-ということは、ギャラリーを作られる前提で移転先を探されたんですね。何が決め手になったのでしょう。

建物のたたずまいが気に入ったんです。地主さんに直接連絡して「お借りできないか?」ってお願いしたら、「いいよ」と言われて。ギャラリー前提でリニューアルのことも相談したら「好きにすればいいよ」って(笑)。

地主さんも詳しくご存じないみたいなんですけど、もともと繊維業界の建物だったと聞きました。戦後まもなく建てられたらしくて、1階が業界の集会所みたいなもので、2階が倉庫だったんじゃないかと。ただ、10年以上使われていなかったので地主さんも壊そうと思われてたみたいで。そこにひょっこり私が来たと。

-すると、築年数は50年から60年になりますよね。そこからのリニューアルとなると内部をかなりいじられたのではないですか? たとえば断熱のこととか。

そうですね、かなりいじりました。断熱材も入れて、屋根も全部葺き替えて。でも、古い物件は頑張っても雨漏りが止まらないですね(笑)。やっぱりガタはきてまして、古い物件というのはそういうリスクはありますよね。

お借りした時は下が3室、上も3室だったかな…で分けられていて。中を壊してみて、柱が1本も必要じゃないという2階の構造も興味深かったですね。トラス組みという構造で。体育館などでよく使う方法なんですけど。

-トラス組みというのは木造でもできるんですか?

限界はありますが普通の木造でもできますよ。集成材だと体育館のような大空間もできます。柱を設けなくても屋根を持たせることができる構造になっているんで、ギャラリーにした2階は部屋の区切りを取り払いました。

1階はオーナーズサロンといってオーナーさんの専用のカフェになっています。コーヒーを飲みに来るということを言い訳にいろんなお話を伺えないかと思いまして。

昔と比べて、おうちって壊れなくなったんですよ、あんまり。だからオーナーさんに呼ばれることが減って接点も少なくなってるんですよね。点検には伺うんですけど、それでは接点として少なすぎたりする。

だからギャラリーはギャラリーなんですけど、設立の趣旨としては変わってるかもしれないですね。いろんな方に見に来てはいただきたいのですけど、起点は弊社のオーナーさんにあるので。「オーナーさんの暮らしを豊かにするお手伝い」を軸に運営するといった形態です。

-家に絵を掛けるというプランはオーナーの強いオーダーによるものなのか、エクリュさんがオーナーの思いをくんで「ここに絵を飾れるようにしましょうか」と提案につなげていくのか、どちらなのでしょう?

オーナーさん自身から「飾りたい」という要望が出ることはもちろんありますけど、潜在的な意識からプランにつながるケースも多いですね。

それは、弊社が打ち合わせで取り入れている「イメージマップ」という手法につながる話なんです。イメージって言葉で伝えづらくて双方の間で食い違ってしまうので、写真などを持ち寄ってイメージをまとめていくんですね。イメージマップを使うとお客さまの潜在的なニーズが見えてくるんです。

たとえば、床の色についてすり合わせするために集めた写真にすべて絵が掛かっているというケースがあったりする。オーナーさんは「この床の色がいい」と思って写真を選んでいるんですけど、選んだということには何か意味があるわけで、そこから分析して「絵を掛けられるようなプランが欠かせないな」というふうになるんですね。

-イメージマップを通じて「実はアートが好きだった」という気づきにつながるケースが多いと。

アートへの興味関心が顕在化している方もいらっしゃいますけど、ほとんどが潜在化してますね。だからイメージマップがすごく必要なんです。マップを前にご説明さしあげると「あ、本当だ!」となる。自分のことって、みなさん分かってるようで分かっておられなくて。

ニーズという言葉が日常的に使われますけど、ニーズってほとんどは潜在化していて、顕在化しているのは本当に氷山の一角だと思うんです。オーナーさんの「鏡」になって潜在化しているものを引き出すことが弊社の存在理由だと常に思っています。

取材時には、福井市在住の陶芸家・片山裕二さんの個展が行われていました

アートにこめる「念」の大切さに気づかされた大学時代

-横山さんの生い立ちについてお聞かせください。今のお仕事を志したのはいつごろなのでしょう?

もともと関西に住んでいまして、建築を志したのは思い起こすと中学3年生の時ですね。神戸市の六甲に『OLD/NEW』というバーがあって。伯母が保険屋をやっていたので、保険の打ち合わせで母と一緒にここに招待されてお茶を飲むんです。建物に入るとすごくワクワクしたんですよね。安藤忠雄さんが若い時に設計した建物だと後に知るのですが。

あと、京都に『TIME’S』っていう商業施設があるんです。これも安藤さんの設計で。高瀬川という川が流れていてその川べりにあるんですけど、この階段を下りていったらどこへ行くんだろうっていうつくりにワクワクするんですよ。これが建築のすごさを感じたきっかけです。

-その時すでに建築系の大学に進むことは意識されていたのですか。

転機になったのは1989年、高2のときですね。当時、奈良の西大和学園という関西有数の進学校に行ってたんです。言うたら、芸大じゃない大学を目指すような進学校ですね。

幼稚園の時から受験続きで、進学校に入ってもうヘトヘトになって「イヤだ」ってなって。東京の吉祥寺で叔母が設計事務所をやっていたので、高2の時に「雇ってくれ」って助けを求めに行くんですよ。親に内緒で東京行って(笑)。

その時、叔母に「ちょっと待っとき」って言われて待合のところで見てた本がルイス・バラガンという建築家の本で、これがまた感動して。叔母に「これって安藤忠雄の師匠なん?」て聞くんですけど、「どうやろ、意識してるんじゃない?」みたいな感じで。

-(笑)

まあ「雇ってくれ」という願いはかなわずで、「あんた、この業界も学歴大事やねんで大学ぐらい出といで」と言われて大学へ行く気になりまして。でも、もう勉強したくないなと思って芸大に行くわけです。

ルイス・バラガンからはすごく影響受けてますね。バラガンは「静けさこそが苦悩や恐怖を癒す薬」って言ってるんです。「すべての建築家は、高価であっても質素であっても、静謐な家を作らなきゃいけない」ということも言っている。住む人がちゃんと落ち着ける空間を提供すべきだと言っている建築家なんですよ。

バラガン自身は、自邸がいろんなことから逃げ込めて守ってくれるような場所だったと言ったりしているんですね。「整えろ」ということもすごく言っている建築家で。私は建築家じゃなくて「建築デザイナー」というふうに名刺に書いてあるんですけど、彼から受けた影響はかなり大きいですね。

-それで西大和学園高校から大阪芸術大学に進まれました。アート、中でも美術の領域との接点もそこで生まれたということでしょうか。

そうですね、大阪芸大に行ったというところがポイントだと思います。大学で出会った荒木正典教授という先生の影響はすごく大きかったですね。デザイン概論を教えておられた先生なんですけど。

荒木先生の課題って、こちらとしては出されたから早く図面書いて絵にしたいのに「コンセプトを文章にして持ってこい」って言ってなかなか進めさせてくれないんです。「そんなコンセプトで人々が納得すると思うんか」とか言われて。

課題でギャラリーを設計したことがあって、ギャラリーに来ることで日常生活のスイッチを切り替えたりとか、気分転換ができるとか、そういうものが都会の人たちには不可欠なんじゃないかみたいなコンセプトでギャラリーを設計したいと言うと「お前は芸術が何か分かってない」って言われまして。

「今月の『芸術新潮』買ったか?」「いや、買ってないです」「じゃあ買ってこい」ということで構内の本屋さんへ買いに行ったら、その時の特集が障がいを持った方の作品で。

-今だとアールブリュットという呼ばれ方もされますね。

その方が性器ばっかり描いているんですよ。「もう先生が何を伝えたいかわからへんな」と。でも、まあとにかくたしかに癒されへんなと思って(笑)。

-思っていたアートとは違っていたと。

コンセプトの段階でそういうことを繰り返すんです。今だったらもうちょっと先生の期待に応える文章になったかもしれないですけどね。

芸大に入るためにデッサンとか習いますけど、デッサンって描写力や表現力が高ければいいってことになるじゃないですか。そこには思想はあんまりないでしょう。でも、描写力や表現力で描けることだけがアートではない。そこにどんな「念」を込められるかが大事だ、ということを先生にたたき込まれた気がするんです。

「絵を飾ろう」という発想の有無は、暮らしの質も左右する

-大学時代の経験がギャラリー運営の礎になっているという印象を受けます。

ギャラリーをやってる以上、作品から作者の「念」を読み取らなきゃいけないと思っています。ギャラリーでの企画展もそれほど回数を重ねたわけではないんですけど。

最近ちょっと思うのは、ギャラリーには「つなぐ」という役割があるんじゃないかということです。以前、猟師の話を聞いたことがあって、猟師って「獲物とつながる」と表現するんですよね。つながったら命をもらえるみたいな。ギャラリーにも同じことが言えるんじゃないかと思っているんです。

ギャラリーを始めた頃、芸大の先輩が個展をしてくれたんですよ。自分自身にどれだけの実力があるか分からないし、このギャラリーの力も分からないので胸を貸してくれないかとお願いして。「1枚も売れなかったらゴメン」って言って、それでやってくれたんです。

-ギャラリーのオープニングの企画展で、それは心強い。

やる以上、先輩がどういう思いで絵に向かっているのかをみんなに伝えなきゃいけないと思ってインタビューするんですけど、まあ真面目に答えてくれないですよね(笑)。「そんなことどうでもええよ」みたいな感じだったりするし。「じゃあもう勝手に伝えていいですか?」と言うと、「いいよいいよ」みたいな感じで。

アーティストから聞き出す力はギャラリーとして必要でしょうし、聞き出せなくても絵から感じられるものをどれだけ言語化できるかが重要なんですよね。

他方で、作品を欲しいという人から「どうしてその作品を欲しいと思ったか」を引き出すことも必要ですよね。両者の思いを猟師のようにパツンとつなげるのがギャラリーがすべきことかなと思うんです。

-「つなぐこと」で生まれる両者の満足度がギャラリーの価値につながるというわけですね。

人にはいろいろな感じ方があると思うんです。たとえばスピリチュアルなエネルギーみたいなところで高揚感を得る方もいたり、文字化した学問で理解できる人もいたりするじゃないですか。僕もアートにめちゃめちゃ詳しいというわけではないですけど、作品を見た人がどういうふうに受け止めるかですよね。

名前でつなげる必然性があれば、ちょっと語弊がある表現になるかもしれないですけど、名前によってつなげることになるかと思います。それも含めて、ギャラリーはちゃんと「個」を見てつなげる必要性があるような気がしますね。

ギャラリーにもいろいろあって、エネルギーを発信されてるギャラリーもあるんですよね。アーティスティックな、社会に対して何かしらのメッセージを届けなきゃいけないみたいなことを使命にされているギャラリーさんもあって。それぞれの考えがあっていいと思います。

-個人個人が気持ちよく受け止められるエネルギーの最適量は違っていますからね。

その中でエクリュギャラリーは「個」にちゃんと着目したい。「この人にはこういう説明をすればご理解いただけるかな」と考えながらつなげていって、飾ってもらって、暮らしの中にいい感じの気を注いでもらうみたいな結果が必要じゃないかなと今のところは思っています。

コレクションみたいに袋に入れてずっと置いておられる方は別として、多くの方は一枚の絵をずっと飾っていることになりますよね。そういう絵はいい空気を出し続ける必要性があるし、そのためにも思いをつなげる必要があると思うんです。その絵から発せられるエネルギーを受信し続けるために。

もともとオーナーさんの暮らしを高めることを主目的に設けたギャラリーなので、オーナーさんの情報はけっこうあるわけです。あとは作家さんの思いを読み取り、相性のいいオーナーさんをつなげる。そうすると弊社で建てていただいた方々の暮らしの質が一気に高まる。

弊社がやっていることは本当に細かいことの積み重ねで、小さなことをコツコツと西川きよし的な感じなんですけど(笑)、アートって一気に高めるんですよ。暮らしの質を。

-なぜ一気に高めると考えられるのでしょうか。

これはもう実体験からですね。我が家にも「ここに絵を飾ろう」と設計した壁があるんです。モネの蓮池を掛けることを想定して。でもモネの蓮池なんか買えるわけないし、かといってポスターもイヤだから、そういう感じの絵に出会うまで飾らず暮らしていたんですよ。

絵を家に飾るともう家の空気が一気に…何というか俗っぽい言い方をするとグレードがめっちゃ上がるというか、空気が全然違うんですよね。だから、みんな飾るべきやわと思うんです。

絵を飾ろうという発想があるかないかは、暮らしの質を左右するという点で大きな違いになると思うんです。高名な作家の作品でなくても、それこそ子どもが描いた絵でもいい。

子どもの描いてきたものを壁に飾ろうと思うか、そのまま収納しようと思うか。暮らしというキーワードの中では大きな違いがあると思うんです。そこに気付いてもらえると、一気にその人の暮らしの質が高まるんですね。

-なるほど。作家が有名だとか無名だとかということが基準ではないと。手がかりがないと作家の名前で選んでしまいがちですけど、そのあたりはどうでしょうか。

誘導尋問的ですけど、「豊かな暮らしをしたいですか」と聞くと、みなさん「したいです」となると思うんです。貧しい暮らしをしたい人はいない。豊かさって金銭の多寡だけの話ではなくて、壁に絵を飾ることも「豊かさ」につながる。

ギャラリーでは陶芸展もやっているので、立体を飾るというところまで発想が行ってくれればすごいなと思うんです。実は我が家は、立体を飾るために廊下をくぼませているところがあるんですよ。まだそのスペースは空いているんですけど、そもそも廊下に物を置くっていう発想はないと思うんですよね。

何もなければ何でもないスペースなんですけど、チェストなどを置いてスタンドを載せる予定になっていて。それで彫刻を置こうと思ってるんですよ。廊下の突きあたりに彫刻を飾って、そこに照明を当てるみたいな。

-写真を見せてもらうと、この天板のサイズはそこそこありますね。ちょっとした小作品を置くというような程度のサイズではない。

そうですね。本当は家具を置いて絵を飾ろうと思ったんですけど、チェストを置いて作品を飾ってみたいなと思って。アートが加わると格が違ってくるんですね。そういう発想をしてもらえればいいのかなと。アート作品だけでなく、家に調度品を置くというのも豊かな暮らしにつながりますよね。

-家づくりの情報源がいろいろある中で、間取りや家事動線の提案は多々見受けられますけど、絵や彫刻を飾りましょうという情報はあまりない気がします。

何のために動線を良くするかということなんですよね。結局何のためかというと、たとえばテレビを見る時間を増やしたいからなんですよね。家事動線はあくまで手段。家事動線を良くすることが目的じゃなくて、テレビを見る時間を増やすという目的を得るための手段なんですよ。

家を建てたいという方が弊社にいらした時、「家って何でしょう?」という話からするんです。みなさん、家を得ることを目的として来られちゃっているんですね。だとすると、家とは雨風をしのぐ場だという話になってしまう。極論ですけども。

そうじゃなくて、家を建てるのは豊かな暮らしを得るためですよね。家を得ることが目的じゃない。家事動線の話にしても、家事が楽になったらピリオドではないですよね。好きな番組をたくさん見られるとか、おいしいコーヒーをゆっくり飲めるとかという目的に向かって家事動線を良くするという手段がある。

その目的が豊かな暮らしというところまで結び付いてくると、ひょっとしたらテレビは雑音だということになるかもしれない。目的が黒澤明や宮崎駿の映画を見ることになったりするなど、そこに芸術が入り込んでくる可能性もありますよね。絵を見ながらコーヒーを飲むという時間を暮らしの豊かさと捉える人もいるのではないでしょうか。

オーナー(施主)との打ち合わせに使う「イメージマップ」を説明する横山さん

地域の豊かさにもつながる「アートのある暮らし」

-もともと「オーナーファースト」というコンセプトで始められたギャラリーですが、一般の方に対しては今後どのように展開されていく予定でしょう。

そもそもキュレーターが弊社のオーナーさんなんですよ。だから「オーナーファースト」という目的はすぐに達成できるんですよね。一般の方にも来ていただけるのはありがたくて、その上でオーナーさんでない方にもギャラリーの趣旨をご理解いただけると、みんながいい方向に向いていけると思うんです。

「展示させてください」って言われることは結構あるんです。それはそれでありがたいことなんですけど、軸がオーナーさんにあるということはブレさせたくない。そこはご理解いただけたらなと。

弊社のいう「軸」をどう捉えていただくかは自由なんですけど、たとえば今日のインタビューのような話を聞いてくださった上で、エクリュのオーナーさんがどういう考えで「ここ(エクリュ)に任せよう」と思ったのかを知ってもらえるとすごくありがたいですね。

背景となる話をどこまで深くつかんでいただけるかはお任せするんですけど、「それはどうでもいいから」というように言われちゃったら「いやいやそれは…」という感じですかね(苦笑)。

-ギャラリーの存在が知られるにつれて、エクリュさんの思いとかみ合わない方からの展示相談が増えてくるかもしれないですね。

難しいですよね。でもね、かみ合っているかどうか、今までもどうだったかは分からないですよ。ただ毎回すごく楽しくて、「よかったね」「終わるのが寂しいね」という終わり方ができているので、ギャラリーの考えをご理解いただいてるのだろうとは思っています。

何よりもキュレーターとしてオーナーさんが入ってくれているので、そこでフィルターはだいぶかかっているというのはありますね。その方も前向きで、福井の家に絵が飾られることが日常になればと考えていらっしゃる。あと、子どもを芸大に進学させようという発想を持つ親御さんが増えてほしいということもおっしゃってますね。

子どもが「芸大へ行きたい」と言ったら、「何のために?」という親が多いですから。

-芸術で飯を食えるのか、というような。

そうそう。そうじゃない雰囲気というのが作れたらいいな、ということをすごく語っておられたので。そういう思いをお持ちになって運営に参加してくださっていて、かつエクリュの趣旨も無視されていないのでうまくやっていけているんだろうと思うんです。

ところで個人的な話で、ベストエフォートっていうのがすごく好きな言葉なんです。

-インターネットの世界でよく聞く言葉ですね。

簡単に訳すと「最善の努力」っていう意味です。インターネットそのものが持っている「持ちうる最大限の力を集めることで一つの環境を作る」という考え方が好きで。力ある者もない者も、それぞれがベストエフォートで社会を構築していけばみんなが幸せになれるんじゃないかと思うんですね。

弊社で建ててもらえなくても、「アートのある暮らし」という視点でみなさんそれぞれの住まいを捉えていただけたら豊かな暮らしにつながって、結果として地域も豊かになっていく。ルイス・バラガンが言っているように、「家が静謐な空間であり、自分を取り戻すことができる場所」であれば、人それぞれがベストエフォートな形となって社会が機能していくんじゃないでしょうか。

プロフィール

横山哲明(よこやま・てつあき)

大阪市出身 大阪芸術大学卒業後、関西のマンションデベロッパー、福井県内の建設会社などを経て2005年にデザイン住宅の設計・施工を行う『Ecru(エクリュ)』を創業。「言葉にならない想いも。」というスローガンの下、これまでに約40棟の住まいづくりを手がける。最近はYouTubeでの『エクリュ・ビデオセミナー』、1組限定の『ライブセミナー』など、映像や対面型の情報発信にも注力する。

この記事を書いた人

MORIKAWA Tetsushi

MORIKAWA Tetsushi(森川徹志)

小学生の頃、親が定期購読していた『暮しの手帖』で雑誌作りの面白さに目覚める。アートに興味を持ったのは、20代の時に関わった情報誌の編集がきっかけ。時代や作家などを問わず幅広く鑑賞するタイプだが、なんとなくの傾向としてデカくて一瞬で「うわっすげえ!」と思える作品が好き。アイドルソングDJ・teckingとしても活動中。